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天の食楽

忍野のとうふ


忍野のとうふ

忍野のとうふ

山中湖のワカサギイメージ

名水の里 忍野で昔から親しまれてきた逸品豆腐

忍野八海で知られる忍野村名水の地として名高いこの村は昔から美味い豆腐が評判でけっして広くない村内に10 軒を超える豆腐屋が軒を連ね近隣からも豆腐を求めるお客さんが後を絶たなかった時代や一斗缶に水を張って豆腐を入れ背負って遠く西桂や富士吉田ま
で売りに出た時代もあったという
現在忍野村には、2 軒の豆腐屋がある県道717 号線を忍野村役場から西に向かって1 ㎞足らずの場所に仲良く並ぶ「八海とうふ」と「豆ふの駅 角屋豆富店」古くから「忍野と言えば豆腐」と言われるほど人気のあった逸品をこの2軒で味わうことが出来る

大正時代から続く「八海とうふ」

八海とうふ店主の浅野育也さん八海とうふ店主の浅野育也さん おぼろ豆腐を試食用に盛っていただいた。おぼろ豆腐を試食用に盛っていただいた

「八海とうふ」の歴史は古い「大正時代私のおばあちゃんが始めたそうです忍野は昔から農業の村味の良い大豆が作れたこともありその大豆を使って豆腐を作るようになったみたいですね昔は『大豆一升につき豆腐を何丁』といった具合に物々交換のような形での商売も多かったようで私が子どもの頃もまだその風習は続いていましたね」と現店主の浅野育也さん豆腐の原料は大豆とにがり至ってシンプルなだけに原料の善し悪しは豆腐の味に直結する「昔は忍野産の大豆を使っていたのですがそれでは間に合わなくなって他から調達するようになってからも大豆はずっと国産のものにこだわり続けてきました今は北海道産の大豆を中心に一部県内産の豆も使っています山梨の米どころとして知られる梨北の豆ですねそれからにがりは絶対に天然のもの豆の良い所を引き出してくれますからねそして一番大事な水豆腐の9 割は水でできていますから美味い豆腐を作るためには良い水が欠かせませんご存知のように忍野は水がいい何と言っても富士山の伏流水ですからねこのミネラルたっぷりの美味しい水で作るから『忍野の豆腐は美味い』と評判になったんだと思います今でも観光客の方なんかは『いつも食べているお豆腐とは全然違う美味しいですね』なんて褒めて下さいますがそれもすべて水のおかげなんですね」良質の国産大豆天然にがりそして富士の伏流水消泡剤も一切使用せず昔ながらの手作業で一丁一丁丁寧に作るこのこだわりから伝統の味「八海とうふ」が生まれている

揚げたてのがんもどきと油揚げも人気だ。 揚げたてのがんもどきと油揚げも人気だ。
揚げたてのがんもどきと油揚げも人気だ

大豆本来の甘味が活きている手作り豆腐
冷やし過ぎず温め過ぎずそのままの味を楽しんでほしい

定番の木綿絹を基本にざる豆腐や寄せ豆腐ごま豆腐さらには油揚げやがんもどき豆乳ソフトなど所狭しと並ぶ店内そのなかから一番人気の「おぼろ豆腐」と揚げたての油揚げ豆乳ソフトをいただいたまずはおぼろ豆腐を一口うーん甘い!大豆の味がしっかりとしていて醤油をかける必要が無い次にアツアツの油揚げをガブリ!カリッとした歯ごたえと口に広がる香ばしさがたまらない!夢中で食べていると「美味しいでしょおぼろ豆腐は最後に水に放さないから大豆の味が外に逃げることなくギューッと凝縮されているだからうちの豆腐の良い所を全部味わってもらえるんでお客さんにも試食してもらっているんです私はこれを温かいご飯に乗せておかかを乗せお醤油をサッとかけて食べるのが好きでねおぼろ豆腐丼美味いですよ!」と浅野さん一方油揚げの方は豆腐とは別の大豆を使い毎朝油揚げ用の豆腐を作ってそれを油で揚げるのだというだからどうしても店頭に並ぶのは午後になる豆腐とは違う独特の味わいそれが揚げたてとなればさらに格別の味わいとなる煮物やみそ汁の具にしてももちろん美味しいだろうけれどぜひサッとあぶって醤油を掛けて食べてみて欲しいと思うそして最後に豆乳ソフトをペロリ生の豆乳と牛乳で作るソフトク
リームは牛乳だけのソフトクリームよりもコクがあるにもかかわらず不思議と後味はさわやかだ「うちの豆腐の特徴は大豆本来の自然な甘味これを一番感じられる常温の状態でぜひ食べてもらいたいですね」

息子さんとご自慢の豆腐を持って。息子さんとご自慢の豆腐を持って

豆“ 腐”じゃなくて豆“ 富”の「角屋」

一般的な豆腐屋のイメージとはかなり違うのが豆ふの駅「角屋豆富店」入り口を開けるとまず目に入るのがカウンターテーブル席もありあたかも町の食堂といった面持ちだカウンターの上の壁には「絹豆腐 147 円」「木綿豆腐 170 円」…と書かれた札が並んでいる見上げていると奥の方から「いらっしゃい寒いでしょどうぞどうぞ中へ入って」元気な声とともに年配のご婦人が顔を出したにこやかな笑顔初対面なのになぜか懐かしさを覚えるこの人こそ現在のご主人渡辺茂樹さんの奥さん知る人ぞ知る角屋豆富店の “ 名物おかあさん”だ

朝早くから忍野の富士山を撮影後にカメラマンの方も寄るという店内は試食スペースが充実。店内には美しい富士山の写真が飾られている。朝早くから忍野の富士山を撮影後にカメラマンの方も寄るという店内は試食スペースが充実
店内には美しい富士山の写真が飾られている

「はじまりはね昭和24 年主人のおとうさん私のおしゅうとさんですよねそのおしゅうとさんが兵隊から帰ってきて始めたって聞いています大きな戦争の後の職の無い時代でしたからねいろいろと考えたようですけれど結局豆腐屋をやろうということになったようですよ」とおかあさん「富士吉田の親戚が豆腐屋を営んでいたんですけどね当時は“ 習うより慣れろ”の時代でしょお義父さんも作り方を教えてもらうことができなくてずいぶん苦労したみたいですよ」試行錯誤の末に生み出したとうふを笹の新芽に乗せて売り歩いていたところあるとき別荘地で夏を過ごしていた都会からのお客さんに認められそこから「笹之雪豆腐」と名乗るようにその後現在の「角屋豆富店」に改名して、4 年が経つ「豆が腐るって書いて“ 豆腐” でしょでも家の主人は豆が腐るだなんて何事だ!ってだからうちのとうふは豆が富めると書くんです」

忍野のとうふは富士山の恵み
訪れる人にもその恵みを分けてあげたい

おかあさんによれば「つるっと喉に入って甘味がポッと出るようなとうふを作りたい」がご主人の口癖そのために全国から厳選した三重県産の大豆と天然のにがりを材料に何十メートルもボーリングした井戸の水を使って昔ながらの製法で作る「とうふ作りは至ってシンプルで前日のうちにふやかしておいた大豆をぐつぐつと煮て豆乳を搾りそこににがりを加えて作るんですもう何十年もの間毎朝毎朝同じ作業を繰り返しているんですよなのに同じものを作り続けるのは難しい主人に言わせるととうふはデリケートなんだそうですよ豆乳の温度が1 度違っても仕上がりが違ってくるんだそうで同じ材料を使い同じ手順で作るんだけれどその日の気温や気候によって大豆をふやかす時間や豆を煮る時間なんかも調整してやる必要があるんだそうですそのさじ加減がまた難しい主人は納得がいかないと豆でも豆乳でもすぐに捨てちゃって店には納得のいく出来栄えのとうふしか並べないの私はよく『もったいない!!』って怒るんだけれど…」困るのよと口では言いながらもまったく困った様子もなくカウンターの中へ入っていく大きな炊飯ジャーを開け中身を慣れた手つきでお玉ですくうと「まずは食べてみて」とお皿にポン「製品にするときは一度熱処理をするも
のだからどうしても少し風味が変わってしまうのねこれは熱処理をしていない今朝作ったばかりのとうふさあさどうぞどうぞ」渡されたのは寄せどうふ湯気と一緒に良い香りが漂ってくるそのまま口に運ぶと甘くコクのある優しい味が口中に広がる美味しい!今度はそこに置いてある醤油をかけて一口これもまろやかでおいしい半ば夢見心地で味わっていると「これも食べてみて」「こっちも味をみて」とおかあさん次々と差し出されるお皿にはゆず豆富しそ豆富一味豆富黒ごま豆富など自慢の味が乗っている勧められるままに食べていたらお腹がいっぱいになってしまった

ぽんとおかあさんが試食のとうふを盛ってくれる。  ぽんとおかあさんが試食のとうふを盛ってくれる。 
ぽんとおかあさんが試食のとうふを盛ってくれる

実は角屋豆富店では全種類のとうふを無料で試食させてくれる食堂のようなスペースはその試食のためのもの遠くからきてくれたお客さんにゆっくり座って味わってもらえるようにと店を改築する際に設けたのだというこんな大盤振る舞いをしていて商売になるのかと尋ねると「わざわざ遠くから来てもらっているのにお金なんか取れますか!」とおかあさん「私たちがこうしておとうふを作っていられるのもそのおとうふを美味しい美味しいってみなさんに食べてもらえるのも富士山の伏流水があればこそ全部富士山のおかげ恵みなんですだから朝に夕に富士山を眺めながら『ありがとうございます』って言いながら作っているんですねそしてうちに来てくれた方にもそれをおわけしたいと思っているんですよ」

とうふの種類もいっぱい!それぞれ風味が違う。 お店の前でおいしい富士山の伏流水が自由に飲める。この水でとうふが作られている。
とうふの種類もいっぱい!それぞれ風味が違う
お店の前でおいしい富士山の伏流水が自由に飲めるこの水でとうふが作られている

伝統に培われた確かな味の八海とうふと人柄がそのままカタチになったかのようなあたたかい味の角屋のとうふ厳選した大豆と天然にがりを使い手作りにこだわって作られる二店二様の「忍野の豆腐」はどちらも甘くて優しくて食べるほどに幸せな気持ちになった

仕切り線

●「八海とうふ」
山梨県南都留郡忍野村内野537-4 TEL 0555-84-3029

八海とうふ

●「豆ふの駅 角屋豆富店」
山梨県南都留郡忍野村内野556 TEL 0555-84-2127

豆ふの駅 角屋豆富店
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