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天の食楽

西桂の「減塩紬味噌」


西桂の「減塩紬味噌」

西桂みそ

西桂みそイメージ01

雪化粧の三ッ峠に見守られながら、和気あいあいと味噌作り

三ッ峠の登山口に位置する西桂町。町内には、富士山と三ッ峠に端を発する清らかな水が流れ、古くからこの水を利用した絹織物業が盛んに行われてきた。近年では、成分が豊富で上質なミネラルウォーターの産地としても知られている。
3月初め、年に一度の味噌作りの日。朝早くから、「大豆の会」のメンバーが、三ツ峠グリーンセンターのバーベキューハウスに集まってきた。「まずはね、大豆を煮るの。大豆は、青ばた大豆。普通の大豆より、甘くておいしいの。昨日のうちにふやかしておいたから、これを、三ッ峠の水で煮ていくの」と説明してくれたのは、代表の渡辺ふゆ子さん。他のメンバーは、用意された8つのコンロの上に、直径50 ~ 60cm はあろうかという大きな鍋を乗せ、火に掛けている。この日は300kg の大豆を仕込むというから、一つの鍋に35 ~ 40kg は入っている計算になる。

青ばた大豆を300 キロ煮込む。かなりの重労働だが、おばあちゃん達は和気あいあい。

しばらくすると、ぐつぐつと音が聞こえ始めた。誰からともなく、蓋を開けてなかの様子を確認し始める。「ときどき混ぜてやらないと、ムラが出ちゃうからね」と、混ぜる人。「灰汁が出るからね、こうやってすくい取りながら、煮てやらないといけないの」と、灰汁を取り始める人…。みんな当たり前のようにやっているけれど、実はかなりの重労働。混ぜるったって、量が多いから普通のシャモジじゃどうにもならない。まるでボートのオールのような木のシャモジで、腰を使ってしっかりとまぜる。灰汁だって半端じゃない。使うのは、ラクロスのラケットのような大きな網。片手で持って、灰汁をすくう。「大豆の会」のメンバーは、ほとんどが70 歳以上。一番年上は渡辺さんご自身で、大正13 年生まれの88 歳だという。みんなでおそろいの帽子を被り、真っ白い湯気を立てている大鍋の周りをはつらつと動き回っている光景は、まるで童話の世界に迷い込んだような可愛らしさで、自然と笑みがこぼれてくる。鍋からの甘く美味しそうな香りに包まれて、心も柔らかくなっていく。
「ちょうど食べ頃だから、よかったらつまんでみて」。渡辺さんに誘われて、鍋を覗く。ふっくらと膨らんだ青ばた大豆は、枝豆のよう。つまんで口に入れたら、ほどよい硬さ。「うん、美味しい!」フワーッと自然な甘さが広がって、なんだかビールが恋しくなってしまう。「味噌にするには、まだまだ。小指と親指で挟んで簡単に潰れるくらい柔らかくなるまで煮ないとダメなの。そうしたら火を停めて、そのまま1~2時間むらしてやるの」。今年の味噌作りは、まだ始まったばかり。

西桂みそイメージ03煮え上がった青ばた大豆。甘くておいしい! これがおいしい味噌になる。

始まりは主婦サークル。今では特産品に。

はじまりは、20 年以上も前のこと。「町で、編み物教室があってね、そこに編み物を習いに行ったの。そしたら、あっちこっちからいろんな人が来ていてね、楽しかったぁ。それでね、教室が終わった後もそのメンバーで集まって、先生を囲んで毎月お茶を飲むようになったのね」と渡辺さん。そのうち、ただお茶を飲んでいるだけじゃもったいない、何か出来ることはないかと、誰からともなく言い出して、「それじゃあ、味噌でも作ろうかってことになってね」。最初は、北海道産の大豆を買い、自分達の家で食べる味噌を作った。そのうち、「買うと高いから、自分達でできることは自分達でやりたいね」と、遊休地を借りて青ばた大豆を作り、薪も近所の山から取ってくるように。そんなある年のこと、「すごくうまくいって、大豆がずいぶんたくさん採れた。それで味噌もたくさんできたもんだから、みんなで近所の人や知り合いに配ってね。そしたら、美味しいって評判になったの」。『減塩紬味噌』と名づけて売りだすと、あっちからもこっちからも、わけて欲しいと話が舞い込むようになった。「千葉とか、神奈川とか、いろんなところにも送ったよ」。こうして、今では西桂の特産品となった『減塩紬味噌』。「20 年以上も経って、最初のメンバーはだんだん年を取っちゃったけど、若い人が参加してくれたりして、なんとか続けられているの。町の方でもいろいろと助けてくれて、今日も役場の若い人が朝早くからお手伝いに来て力仕事をいろいろとやってくれているし、作業所やずっと同じ温度に保っておける味噌蔵も作ってくれたりして、ありがたいね」と渡辺さん。「ただ、最近は年を取って、畑仕事が辛くなってね。それで、ここ数年は、吉田の農家に分けてもらっているんだけれど、お金もかかるし、なにより西桂の豆で味噌を作れなくなったことが残念でね。できれば、また作りたいんだけれど…」と少しさみしそう。「大丈夫。お母さんこんなに元気だもの、美味しい大豆がきっとできるよ」と声を掛けると「そうだね。じゃあ、来年はやってみようかな」と、目を輝かせた。

西桂みそイメージ04
大豆の会 代表の渡辺ふゆ子さん 去年仕込んだ味噌樽。

美味さの理由は、天然の材料と昔ながらの醸造法。
じっくり寝かせ、来年の秋以降に食べ頃を迎える。

そろそろ大豆が柔らかくなった。「大豆の会」が作る味噌は、西桂に昔から伝わる醸造法で作られる。「煮上がった大豆は、専用の機械に掛けてつぶしてね、そしたら、ゴザの上に広げて、熱を取ってやるの」。ひと肌くらいになったところで、塩、米麹と麦麹を同量混ぜ込み、さらに「旨味が溶け込んだ煮汁も加えて混ぜてやる。そうすると、ちょうどいいゆるさになるからね」。これを、大きな桶に詰めて、今日の作業は無事終了。後は、雑菌が入り込まないように塩水に漬けこんだガーゼで表面を覆い、しっかりと蓋をして重石を乗せた状態で、味噌蔵で熟成させるのだという。「開けるのは、9 月のお彼岸が過ぎた頃。いい色になって、美味しくなっているの」と渡辺さん。「熟成した味噌は、私たち『大豆の会』のメンバーの分と知り合いの分。残りは、三ッ峠のグリーンセンターで売ってもらったり、欲しいって人がいたら送ってあげたりしているの。結構評判が良くってね、1 年間持たないこともあるのよ」と嬉しそう。「それじゃあ、儲かっちゃうね」と声を掛けると、「材料が高いからそんなには残らないけど、みんなで旅行したり、美味しいものを食べたりして、使っちゃう」。ぺろりと舌を出して、おどけてみせた。
気がつくと、もう夕方近くになっている。味噌作りは、1 日がかりの大仕事。ちなみに、大豆の会では、毎年600kg の大豆から1.2トンの味噌を作っていて、明日もまた、同じ作業をやるという。帰りに「減塩紬味噌」を一袋購入した。家に帰り、袋を開けると、途端に広がる麹と豆の良い香り。煮干しで出汁を取り、豆腐とわかめの味噌汁にすると、ほんのりと大豆の甘味が感じられる。優しくて、どこか懐かしいその味は、子供たちにも大好評だった。

西桂みそイメージ05大豆の会メンバーのみなさん
西桂みそイメージ06人気の減塩紬味噌と青ばた大豆はグリーンセンターで販売されています。

仕切り線
「大豆の会」が作った「減塩紬味噌」は、西桂町の三ッ峠グリーンセンターで販売されています。

●西桂町営三ッ峠グリーンセンター
山梨県南都留郡西桂町下暮地1900 TEL 0555-25-3000

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