楽しさ満載の富士山・富士五湖エリア。みんなで一緒に思いっきり遊ぼう!

特集

富士五湖の魅力


富士五湖の魅力、そして、とっておきの愉しみ方

アウトドアの達人、木村東吉が語る

富士山・富士五湖の自然に魅せられて、富士河口湖町に移住して十数年。その過ごした時間の中、自然が見せる豊かな表情や新たな発見など、その魅力を語る。

木村東吉さん
五湖五様の富士五湖の魅力

富士五湖は、五つが五つとも趣きが違う。とてもおもしろいと思います。具体的に言うと、西湖の水深は最も深いところで78。冬でも決して結氷することがありません。僕もよくカヌーに乗りに行きますが、非常に深くて美しい湖です。一方、最も小さく、水深も浅いのが精進湖。形が入り組んでいて、冬には全面結氷することもある、富士五湖の中で最も表情豊かな湖です。また、本栖湖は130の深さがあって、透明度も30近くあり、神秘的な部分を残していますし、僕が住んでいる河口湖と隣の山中湖は、とても大きくて、モーターボートが走ったり、遊覧船が回遊していたりと、楽しみ方のスケールも違ってきます。湖畔には、小粋なレストランやホテル、ちょっと雰囲気の良い美術館、体験館、公園なんかも整備されていて、おしゃれなリゾートといった印象がありますよね。ただ、この2つが同じかと言えば、やっぱり違う。それぞれが独特の雰囲気を持っているのです。
そして、この5つの湖にぜひ加えたいのが忍野八海。水の美しさは言うまでもありませんが、その地域の有り様も含めて素晴らしいなと。たとえば、以前どんと焼きの撮影に行ったことがあるのですが、子どもたちが朝から火の番をして、しめ飾りなどを各家庭に取りに行って、それを燃やして、お駄賃をもらって…という、昔はどこにでもあっただろう懐かしい風習が、ここには今も日常の一コマとしてきちんと生きているんですね。とても感動しました。

ここは特別な場所。
寄り道いっぱい、発見いっぱいの非効率な観光こそが楽しい

富士五湖とひとまとめにして呼んでいますが、実はこんなにも表情が違うし、楽しみ方だって違う。できれば一つずつ訪ねて、本当の富士五湖に触れてほしいですよね。そして、そのための一つの方法が、動力を使わず人力だけで回るという楽しみ方ではないかと思うのです。自分の足で歩いたり、マウンテンバイクを利用したりする方法ですね。時間はかかるけれど、その分ゆっくりと自分のペースで見て回ることができる。僕はね、歩くスピードだからこそ見えるもの、楽しめるものっていっぱいあると思うのです。
観光に効率を求めてはいけないと僕は思います。観光はやはり非効率であった方がいい。寄り道いっぱい、新しい発見いっぱいというのが本当の旅の楽しさではないかと僕は思います。

山へ登り、樹海を歩き、大自然の神秘に触れる感動の瞬間

カヌーに乗りたくて河口湖に移り住んだ木村さん
▲カヌーに乗りたくて河口湖に移り住んだ木村さん。透明度の高い西湖でカヌーっと漕ぐとまるで空を飛んでいるよう。
富士五湖めぐりの秋のトレッキングツアー
▲富士五湖めぐりの秋のトレッキングツアー。西湖から三湖台、足和田山と富士五湖を眺めながら巡るロッククライミング
 ところで、僕は、カヌーが日常にある暮らしを夢見て1995年に家族とともに河口湖に移住してきたのですが、実際に暮らしてみると、他にも楽しいことがたくさんあることに気づきました。その一つが、周囲の山々を歩いたり走ったりすること。今ではもう山歩きは日課のようになっていて、数えられないほど登ったり歩いたりしているのですが、初めて十二ヶ岳に登ったときのことはいまだに忘れられません。富士五湖には、「富士山を作ったときの神様の汗と涙で5つの湖ができた」という伝説があるのですが、十二ヶ岳の頂上から4つの湖を見下ろしたとき、「今僕は神様と同じ視線で景色を見ているんだ」という実感がワーッと湧いてきて、全身が震えてしばらくは動けませんでした。
富士五湖はバリエーションに富んだ山々に囲まれていますから、ぜひそうした山々に登って、富士五湖を、富士山を見てほしいと思います。山の上から見る景色は、普段見ているのとまったく違いますからね。
具体的なポイントとしては、まずは三湖台。西湖と本栖湖が見えますし、富士山も本当にきれいです。西湖民宿村からゆっくり歩いても約30分ほどで登れますから、初めての人でも大丈夫です。一方、体力に自信があって装備も持てるなら、十二ヶ岳。ここからは、富士山をバックに、目の前に西湖、その横に河口湖、はるか遠くに山中湖、反対側に本栖湖と、本当に素晴らしい景色が広がります。さらに、富士山をきれいに見るなら、二十曲峠。ここは車でも行けますし、夜のデートスポットとしても有名です。あそこから石割山に向かっていくのも良いルートですね。そして、本栖湖方面では、パノラマ台や烏帽子岳。かなり体力が必要ですが、半日かければ、精進湖と富士山が素晴らしい景色を見せてくれます。
ただし、トレッキングの際には、それ相応の準備も忘れずに。一つには、ルートとしてどの程度の時間がかかるのか、市販の地図でしっかりと確認し、そのタイムを忠実に守って歩くこと。二つ目は、それによって適宜装備をすること。たとえば3時間程度の行程であれば、水と簡単なスナック程度で十分ですが、5時間、6時間となれば、水、ランチに加え、雨具も必要ですし、靴や服装も違ってきます。人間は火を使うことで他の動物よりも優位に立つことができましたが、装備も火と同じ。どのような道具をどれだけ持って自然の中に入っていくかは、自然の中で優位性を保てるかどうかにつながります。多すぎても少なすぎてもリスクが伴う。やはり、時間と山の難易度を考えた上で、その場合に最もふさわしい道具を持っていくということが重要だと思います。
それから、忘れてならないのが樹海。樹海はね、本当に素晴らしいです。たとえば僕が以前訪ねた場所には、直径30位の古い池があって、その横に樹齢700年はあろうかと思える立派なミズナラの木が生えていた。そもそも樹海というのは、富士山の噴火によって流れ出た溶岩の上にできた原生林です。溶岩は非常に保湿成分が高いため、その上で木々は育ち、海と呼ばれるほどの広大な森を作ったのですが、深く根が張れないので大木になると倒れてしまうんです。ですから、樹海にはあんなにたくさんの木があるけれど、樹齢100年に満たない木がほとんど。倒れた木が苔むしてまた新たな木を育てるというのが、樹海の一般的なサイクルなのです。ところが一部には700年、1000年という木も残っているんですね。まさに自然の神秘です。さらに、樹海を歩いていると、鹿の群れがバーっと目の前を通り過ぎたりもする。偉大なる自然です。至宝です。樹海というと、怖いとか、入ったら生きて戻れないとか、そんな間違った先入観を抱いている人が少なくないようですが、心配はいりません。ちゃんと遊歩道がありますし、よいルートがたくさんありますからね。

素晴らしい舞台
ここは素晴らしい舞台だから、楽しみ方なんていくらでもあるんです

僕はこの場所でもう15年以上も暮らしているのですが、飽きるどころかますます楽しくなっている。ここは素晴らしい舞台だから、楽しみ方なんていくらでもあるんです。だから、駆け足で要所要所だけ回ってその日のうちに帰っていく人を見ると、「もったいないなぁ」って思う。もっとゆっくり時間をかけて楽しんで行けばいいのにって思います。たとえば、2泊3日の予定であれば、1日目は山へ登ってゆっくりと美しい景色を楽しんだり、自転車や徒歩で自然を巡る余裕が持てますよね。で、夜は温泉でゆっくり疲れを癒して、翌日、観光地を訪ねる。そういう旅にすればコントラストも生まれますよね。それに、お土産を一つ買うにしても、それがなぜ生まれたか、どうしてこういう味付けなのか、なぜこうやって食べるのかといったことを、実際に自分が歩いてみていれば、その中から生まれたんだなと感じることができる。それを手に取り、食べてみる。持って帰って話して聞かせる。それはやはりその場所へ行かなければ手に入れることのできない、世界で一つだけのお土産なんです。そしてさらに、そのお土産を見るたびに、旅の追体験をし、またその場所へ行きたくなる。それが本当のお土産だと思うし、僕の考える旅なんですよね。

 ●木村東吉さん
 ●モデル・アウトドアエッセイスト
 ●1958年大阪生まれ。18歳でモデル活動を始め、男性ファッション誌やCMなどで活躍。80年、ミネソタ州800kmを自転車・マラソン・カヌーで縦断するレース「ミネソタ・ボーダー・トゥ・ボーダー」に日本人として初めて参加。このとき見た光景がきっかけとなり、95年、家族とともに河口湖(現在の富士河口湖町)に移住。著書に「森と湖の生活」(光文社)「こんな暮らしがしたかった」(山と渓谷社)など。

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